February 5, 2022

unmeets

久しぶりにブログを書くことにした。オミクロン株 (SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統) における新型コロナウィルスの影響が猛威を奮う前、奈良・吉野「neomuseum」(同志社女子大学の上田信行先生のおつくりになったワークショップ専門ミュージアム)で「unmeets2022(アンミーツ2022)」というイベントが計画され、参加する予定にしていた。

このイベントは、どちらも教育を専門とする専門家である同志社女子大学におられた上田信行先生と現在は立教大学に異動された中原淳先生の共著で書かれた「プレイフル・ラーニング」という本が出版されてから10年という節目の年に企画された企画であった。

上田信行先生とは、私自身がMITに留学していた時に同時期にMITメディアラボにいらっしゃっていた先生で、毎回、異種交流戦での会話を楽しんでいた記憶がある。帰国後も、私を同志社女子大学のゼミに参加させてもらったり、いきなり、「旅する neomuseum」という Facebook ライブ限定のラジオ配信イベントにゲストとして出させてもらったり、更には、「場のデザイン」というコンセプトで様々な建築家の方々と交流があり、その現場に参加させていただりと、非常に楽しい時間を過ごさせてもらっている。ワークショップのデザイナーと呼ぶべき上田信行先生は、日々違う仕掛けが必ず用意されていて、毎回、最初は多少なりとも不安になるものであるが、その日が終わった時には言い表しようがない達成感に満ち溢れている。

何かの機会に見つけた今回の「unmeets2022」のイベント。「会うこと」の意味を考えるというワークショップで非常にテーマが興味深かったこと、更には、まだ行ったことのない奈良・吉野の地へ出向いてみたいと思い、参加申し込みをしたが、見事にオミクロン株の拡大のためにイベント自体は延期。代わりにオンラインイベントを開催することになった。そこには、対面イベントでは感じることが出来なかった「オンライン上で会う」ためのヒントが様々に隠されいたように思える。

まず、事前準備。私が2008年3月に Michael Nielsen という業界のスター研究者がトロントで一般の人も巻き込んだイベントをするということで、トロントの街に初めて行きたいということもあって、申し込んだ「SciBarCamp @ U Toronto」というイベント。私は当時幸いなことに Michael Nielsen のオフィスがあった Perimeter Institute for Theoretical Physics というトロントから少し離れた Waterloo というカナダの小さな田舎街に滞在していた。そこで、イベントの準備をしている Michael Nielsen に出会い、どうしてこんなイベントをやっているのか?更には、どのような事前準備が必要なのか?ということを学んだ。そこで、出会ったのが会議のプログラムを事前に全く決めない Unconference 形式というワークショップ形式であった。当時の私は、今よりも英語で表現するのが非常に難しく、色々と苦労することがあったが、1日の最後にパブで行われる組織委員だけのミーティングに参加して、翌日のワークショップがどのようなものになるのか?ということを検討していた。それは事前にワークショップ参加者が、「これだ」と思う提案だけを考えてきて、プログラムは参加者みんなの合議で決めていくというもので、非常に斬新的であった。この話をMITで上田信行先生にしたところ、即、このワークショップ形式を検討していただいたようで、2011年に「REMIX2011@neomuseum」というイベントでコンセプトを採用していただいたように思える。当時、私自身は吉野でのイベントには参加していなかったが、先の「プレイフル・ラーニング」の本の中でイベントの詳細は紹介されている。

そのオンライン版。どうなるのだろうと思っていたら、事前に配れた「ミッションカード」。当時のイベントのイラストを基にして描かれたもので、統一感があり、更には、「自己紹介」から「トークTシャツのロゴ」、そして「トークテーマ」などなど、様々に準備をしなければならないことがあった。自己紹介するだけでも面白くなり、Facebook Group 上での見えない繋がりが繋がりを呼び、大変ビックリしていた。また、親子での参加者や10年前のイベント参加者からの繋がりなど、多種多様で、「繋がっていそうなのだけど、繋がっていなかった」という感覚がイベントが始まる前に得られたのが大きい。

そして、事前に送付されてきた贈り物。「Tシャツ」「メッセージボード(ホワイトボードタイプ)」「お茶」「チョコレート」と実に参加者の一体感を出すにはうってつけのアイテムだった。オンラインイベントの参加条件は、ドレスコードが「送れてきたTシャツを着ること」であったため、皆、同じTシャツを来て、イベントに参加することが出来た。場は共有できなくても、アイテムを共有することで一体感が高まるのだなと感じた。

更に、オンラインイベントがスタート。ウォーミングアップとして、みんなで一緒に「ダンス」することから始まる。夏休みに毎朝、ラジオ体操をやっていた私にとってみれば、その妙な一体感が好きであったが、それと似た疑似体験をすることが出来た。そして、ブレイクアウトルームに分かれて、2人っきりでの自己紹介。2分間で喋らなければならないから、強制的に喋るようになるし、とにかくセット数が多い。今回は8回行うと、参加者同士で2回目ましての人が現れる。こういう偶然も面白かった。個々の意識をとがらせる時間と全体で場を共有する時間とが見事に分かれていて、非常に面白かった。何から何まで初めての試みを運営スタッフ自体も楽しみながらやっていくことは並大抵のことではなかったと思うが、参加していて純粋に楽しかった。

そして、最後にきちんと「リフレクション」があった。そして、出来会ったのが特別な雑誌「un」。準備のところからイベント中の風景、イベント後のリフレクションまで実に細部にこだわられたものであった。「なつかしさ」もありつつも、どこかで「次も」と思わせる仕掛けが満載であったなと思っている。

オンラインでもオフラインでも、気持ちを一つに出来る場の存在というのはとっても重要だと思ったし、更には意見を真剣にぶつけあわせるということの大切さを改めて感じた。具体的に明日行動できることがあるわけではないと思うが、こういうものの積み重ねによって学びが一つ一つ昇華していくのだろうと思っている。