May 30, 2020

グッドハートの法則


あまり聞き馴染みのない法則であると思う。私がこの法則を知ったのは、昨年、GigaScience という雑誌に掲載された「学術論文統計」における分析がなされた論文のタイトルに書いてあったからである。論文の主旨はメタ分析科学の論文で非常に読み応えがあると同時に様々なことについて考えさせられた。グッドハートの法則とは、

Any observed statistical regularity will tend to collapse once pressure is placed upon it for control purposes.

という経済学の経験法則であり、ルーカス批判キャンベルの法則とも類似性があるということが知られているらしいがあまり詳しくは知らない。

ただ、これを我々がやっている自然科学研究に適用みようとする。自然現象の本質に迫ろうとすればするほど、コントロールされた状態に自然現象を押し込めたくなる。たまにコントロールサイエンスと呼ばれる。一方で、自然現象を知ろうとするには非常に良い手法な気がしており、「対象群」と「コントロール群」との差において、示したい「概念」「法則性」をサポートする結果はどの科学技術分野にもある研究スタイルだと思っている。しかし、コントロールサイエンスが極限まで行き過ぎると、結局のところ、「自然の何を理解したかったのか?」ということが分からなくなってしまう。そんな状態に陥ってしまった学問分野は少し考えただけでも沢山浮かんでくる。自然の「ありのまま」の姿を浮き彫りにしたいはずであった私が専門とする「計測科学」においても、同じようなことにならないように気をつけなければならない。

コロナ禍において顕著になってきたことのように思えるが、様々なことは「統計データ」を見て判断されているように感じることがあるし、「統計データ」だけを見て賛否を明らかにしなければならない状況というのが沢山あるように思える。ただ一方で「統計的な指標だけ」に頼った判断というのは、愚かな結果を生じやすいというのが歴史の教えてくれることではないだろうか?

No comments:

Post a Comment